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なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part④

なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part①
なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part②
なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part③

肥満とストレスの関係とは?

ストレス耐性を下げている原因について、分かりやすくまとめてみましょう。

1、自律神経の乱れ
人工的な生活時間の延長は、交感神経が優位になる時間を延長させるため、自律神経が乱れる原因となります。また、ちょっとでも寒ければ暖房、ちょっとでも暑ければ冷房で快適な温度で生活していると自律神経の働きを弱らせてしまっています。身体の恒常性を保とうとしなくても、環境の温度を調整することによって、自律神経が働かなくてもよくしてしまっているのです。飼い鳥が温度変化に弱い原因は、ここにあります。

2、ストレッサーの減少
「良いストレスは身体に必要」というのを聞いたことが無いでしょうか?これは、適度にストレッサーを受け続けることで、そのストレッサーに対して抵抗力がつくということです。ストレス反応というのは、実は身体を守るためにあるのです。それが過剰にあると害になるわけです。ストレッサーが少なければ、ストレッサーに弱くなる。つまりストレス耐性が下がるわけです。

これらのストレス耐性が下がってしまう原因に加え、強いフラストレーションを抱えさせることとなっています。フラストレーションの原因をまとめてみましょう。

1、生きる目標と目的の喪失
生物の生きる目標は生き延びることであり、生きる目的は子孫を残すことです。もちろん人間もそうなのですが、人間は本能が壊れているので、意識に常に上がっているのは自己実現欲求であり、子を持つことが生きる最大の目的ではなくなっています。もちろんこれは社会情勢によって異なりますが、日本人は特に自己実現欲求が強い人種だといえるでしょう。鳥本来の生きる目標と目的を奪うことは、本来やるべきタスクを奪い、そして発情期の延長を促し、それが結果としてフラストレーションを引き起こします。

2、コントロールされた生活
野生における自由はあるが安全ではない状況には、選択自由があります。安全ではあっても選択の自由のない、人間にコントロールされた生活は、フラストレーションの連続となります。

このようにストレス耐性が下がり、フラストレーションによって、日々ストレスを感じる生活を送っています。それではストレスがなぜ肥満の原因になるか説明していきましょう。

1、閾値を越えるストレッサーがあると、脳の視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌されます。CRHは下垂体前葉に作用し、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌させます。ACTHは副腎皮質に作用し、コルチゾールを分泌させます。

2、コルチゾールには、血糖値の上昇、脂肪の蓄積、血圧上昇などの作用があります。過剰に分泌されると、食欲が増進し、脂肪の蓄積が進行して肥満することとなります。またコルチゾールは、甲状腺ホルモンの分泌も低下させるため、代謝が悪くなり肥満に繋がります。また免疫が抑制され、感染を受けやすくなったりもします。

3、CRHは、交感神経に作用しノルアドレナリンを分泌させます。これによって副腎髄質が刺激を受け、アドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。アドレナリンとノルアドレナリンは血管を収縮させるため、末梢の血液循環が低下して代謝が下がり、肥満に繋がります。

生物が最もストレスと感じるもの、それは飢餓です。食物がない状態は最も命を危険にさらすため、空腹が続くとストレスを強く感じることとなります。よって生物には、「ストレス=飢餓」と認識するメカニズムが備わっています。ストレスを感じると飢餓に耐えられるように、なるべく脂肪を蓄積したり、代謝を低くして蓄えたエネルギーをなるべく使わないようにしたりと、身体が痩せにくい体質に変化してしまうのです。

またこの他にも食欲が増進する理由があります。それはドーパミンの存在です。食べることで脳内でドーパミンが分泌されます。ドーパミンは快楽物質であるため、不快感情を一時的に改善します。よって食べることでフラストレーションによって感じるイライラした不快感情が改善するため、食欲が亢進してしまうのです。またストレスはセロトニンの分泌を低下させます。セロトニンの不足は、満腹中枢の働きを低下させるため食欲が亢進する原因となります。

このような機序により、ストレスによって食欲が亢進し、代謝が低下することによって肥満が起こってしまうのです。

次回は、肥満対策について解説していきます。

なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part⑤
テーマ: 小鳥大好き | ジャンル: ペット

ニコちゃん@オカメインコ

バードドックを受けたオカメインコのニコちゃんのご紹介です。

ニコちゃんは、1歳5ヶ月の男の子です。

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今回は、Dコースを受診しました。糞便検査で、ヘキサミタがたくさんいるのが見つかりました。ヘキサミタ自体は無害のことが多いですが、腸内細菌叢の乱れが増殖の引き金になっていることもあるので、今後便の状態に注意してくださいね。
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なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part③

なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part①
なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part②

鳥たちの求めているものとは何なのでしょうか?

生物が普遍的求めているものとして”安全でありたいと”と言うものがあります。安全であるためには、生理的欲求と安全欲求が満たされている必要があります。生理的欲求には、食欲と睡眠欲が含まれます。食べ物がなければ生きていけませんので、生物は完全に餌がなくなる前に食物を求めます。また寝る時は、周囲に注意を払うことができなくなるため安全な寝場所を求めます。安全欲求には、敵から襲われないことが最も重要です。群れを作る動物は、たくさんの個体の一部となることで、敵から狙われる可能性を下げています。これを希釈効果といいます。また安全欲求には、寒さや暑さから身を守ることも含まれます。換羽によって羽毛の質を変え、寒い時には群れで身を寄せ合い、暑い時には日陰や風通しの良いところに移動します。

え?、うちの鳥たちは安全で快適に生活しているですって?

はい、その通りです。しかしそれが鳥たちにどんな影響を与えているのでしょうか?飼い鳥と野鳥の生活の根本的な違いは何かというと、"自由"と"安全"です。飼い鳥には自由がありませんが、安全があります。野鳥には自由がありますが、安全は保障されていません。自由というのは、自分で選択する自由です。飼い鳥に与えられた選択肢は、飼い主が与えたものだけです。野性に比べれば、選択するために思考する量は圧倒的に少ないのです。

実はこの違いがストレス耐性を下げてしまう大きな原因なのです。飼い鳥は、食事も十分にあり、安全な寝場所もあり、敵も襲ってきません。また寒ければ暖房、暑ければ冷房で快適な温度で生活しています。この生理的欲求も安全欲求も満たされて、野生での大きなストレッサーを取り除いた生活は、一見非常に魅力的です。

しかしこれを人に置き換えて考えてみましょう。極端な例を示すと、感覚遮断実験というものがあります。人を密室に入れて外部からの刺激を遮断し、食べ物だけを与えるだけの生活をさせるとどうなるのか?人はこのように外部からのスレッサーを排除された状態にすると、すぐに幻聴や幻覚、妄想などの症状が出てきます。人は、適度な強さと持続時間のストレッサーを絶えず受ける事で、現実認識や感覚機能の正常性を維持している事が分かっています。

つまり鳥にも適度なストレッサーが必要なのです。適度なストレッサーとは何か?それは”野生に学べ”です。野生で鳥たちは何をしているのでしょうか?それは、1日の多くの時間を餌探しに費やし、そのためにたくさん飛んで移動します。その間も敵に襲われないか周りに気を払い、仲間と触れ合ってスキンシップをしたり、伴侶を探したり、巣穴の場所争いをしたり、縄張りを守ったり、そして夕方になると寝場所に戻って仲間と情報交換したりしています。生きるために鳥たちは、たくさんやる事があり、そして自らが考えて、行動を選択しているのです。適度なストレッサーを受けることで、ストレス反応が出る閾値が上がり、ストレスを感じずに生活することができているのです。つまりストレッサーが無いとストレス耐性が下がるばかりか、それだけでストレスとなってしまうのです。

飼い鳥たちは、本来やるべき”生きるために思考し行動する”ということをやらなくて良い生活をしています。生きることが目標なのに、生きてて当たり前になるわけです。そうするとどうなるのか?結果として、生きる目的である子孫を残すための行動が増える、つまり発情期が長くなり、非発情期にはやることがなくなってしまいます。

慢性的な発情は、特にメスには大きな身体的ストレスとなり、満たされない繁殖の欲求は、オスにもメスにも精神的ストレスとなります。

そして非発情期のやることがない。これが大問題なのです。ストレッサーが少ない上にやることがないのです。それだけでストレスなわけです。このストレスは何から来るのでしょうか?例えばこんなケースで考えてみましょう。人に慣れているセキセイインコさんが、ケージ内に1羽で居たとします。そこへ飼い主さんが帰ってきました。この仔は何をしますか?鳴いて出して欲しいと飼い主さんに一生懸命アピールすることでしょう。そこで出して貰えなかったら?またいつもは出してくれてたのに、仕事が忙しくて遊んであげられなかったら?この状態で鳥たちが感じているのは、”フラストレーション”です。フラストレーションとは、欲求不満のことです。飼い鳥は何らかの刺激(ストレッサー)を求めているのです。フラストレーションは、通常すぐには問題になりませんが、連続したフラストレーションは、精神的ストレスに発展します。鳥たちはストレス耐性が下がっている上に、本来感じる必要の無い、このフラストレーションにストレスを感じているのです。

フラストレーションを感じた時、それが解消され無いとどうなるのか?刺激を求めても外部からの刺激がないと、今度は自分で刺激を作り出そうとします。例えば1人で車を運転していて、順調に流れているんだけど、自分が走りたい速度より遅いと感じた場合、人は何をするのか?音楽でも掛ければ良いけど、その外部刺激もなかったら?そうすると人は、歌を歌ったり、身体をモゾモゾ動かしたりして何らかの刺激を作り出します。これを”自己刺激行動”と言います。実は、この自己刺激行動が過剰になったものが食欲が増す原因だったり、毛引き症の原因にもなっているのです。

次回は、いよいよストレトと肥満の関係について解説していきます。

なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?Part④
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