【非常に重要】鳥ボルナウイルス検査開始のお知らせ

鳥ボルナウイルス検査開始のお知らせ

腺胃拡張症(PDD;Proventricular Dilatation Disease)を引き起こし、毛引き症を引き起こす可能性のある鳥ボルナウイルス(ABV;Avian Bornavirus)の検査が12月から開始されます。この検査は、当院と(株)ケーナインラボで共同開発しておりましたが、検査系が確立したため受付を開始いたします。

【検査対象となる症状】
◯腺胃拡張(レントゲン検査所見)
◯毛引き症
※健康診断としての検査も推奨

【検査検体】
検査検体は、糞便となります。糞便は3日分以上(できれば7日分)、1日1個の糞便を乾燥しないようラップで包み冷蔵保管してお持ちください。

【検査結果の評価】
◯検査結果が陽性の場合
ABV陽性であり、腺胃拡張、毛引きの症状がある場合は、感染し発症している可能性があるということになります。ABV陽性であっても無症状の場合は、必ずしも感染しているとは言えませんが、感染している可能性があり、今後発症する可能性があります。

◯検査結果が陰性の場合
ABV陰性の場合でも、感染が否定されたわけではありません。ウイルスに感染していても、糞便中にウイルスを排泄していない場合は、検査結果が陰性となります。よって症状がある場合は、複数回の検査をお勧めします。また無症状であっても健康診断として1年に1回程度の定期検査をお勧めします。

【治療について】
現在、ボルナウイルス感染に対する治療は確立されていません。しかし人や実験動物においては、抗ウイルス剤が功をなしたという報告がいくつかあります。また鳥ボルナウイルスにおいても、培養細胞においては抗ウイルス剤がウイルスの複製を阻害するという報告があります 7)。今後当院では、抗ウイルス剤の使用を検討していきたいと思います。

鳥ボルナウイルスとは

 ボルナウイルスは非分節の一本鎖マイナス鎖の RNA をゲノムにもつモノネガウイルス目(Mononegavirales)に属するウイ ルスです。現在、ボルナウイルス科(Bornaviridae)ボルナウイルス属(Bornavirus)には、哺乳類に感染するボルナ病ウイルス(BDV;Borna Disease virus)と鳥類、主にオウム目 に感染する鳥ボルナウイルス(ABV;Avian Bornavirus)《最近では、オウム目に感染するボルナウイルスをオウムボルナウイルス(PaBV;Parrot Bornavirus)と表記している文献もあります》、爬虫類に感染する爬虫類ボルナウイルス(RBV;Reptile Bornavirus)が同定されています。これらボルナウイルス属のウイルスは、神経系組織に好んで感染することが知られており、自然感染した動物ではさまざまな神経疾患を発症します。

 2008年に腺胃拡張症(PDD)を発症したオウムよりBDVに類似した塩基配列が同定され,、ABVと名づけられました 3,6)。その後、ABVがPDDの原因ウイルスであることが証明されるとともに 2)、カナダガンやハクチョウなどの渡り鳥にも感染が確認され 1,8)、ABVが世界中に分布していることが明らかとなってきています。現在、ABVには少なくとも9つの遺伝子型が同定されています。遺伝子型による病原性は分かっていません 4)。日本では、ABV-2型、ABV-4型、ABV-5型の発生が報告されています 4,5,9)。今回始まる検査では、遺伝子型までは分かりません。

ABVは鳥類、主にオウム目の鳥に腺胃拡張症(PDD)を引き起こします 2)。PDDは中枢神経系と末梢神経の神経節へのリンパ球浸潤を主張とする致死性の神経疾患です。消化管組織の平滑筋に関連する神経節がしばしば 影響を受け、腺胃や小腸の膨張と運動障害を引き起こします 2)。また国内において、毛引き症を発症したオオハナインコからABVが検出されています 4)。鳥ボルナウイルスが本当に毛引き症を引き起こすかどうかは分かっていませんが、ABVを含む脳のホモジネート物を注射されたオカメインコ3羽のうち1羽に毛引き症を引き起こした報告があります 2)。哺乳類のボルナ病ウイルス(BDV)感染の場合、ラットにおいては2種類の臨床症状を示します 10)。BDVを接種された成体ラットは、致命的な非化膿性脳炎を起こします。これは、PDDの組織病理学的所見に類似しています。一方新生児ラットにおいては、BDVは慢性感染を起こします。これは、明白な脳炎は起こさずに軽度の行動障害を示すようになります。ABVも脳に慢性感染した場合には、毛引き症の原因として考慮する必要があります 4)

1) Delnatte P, Berkvens C, Kummrow M, Smith DA, Campbell D, Crawshaw G, Ojkic D, DeLay J: New genotype of avian bornavirus in wild geese and trumpeter swans in Canada. Vet Rec 169: 108, 2011.

2) Gancz AY, Kistler AL, Greninger AL, Farnoushi Y, Mechani S, Perl S, Berkowitz A, Perez N, Clubb S, DeRisi JL, Ganem D, Lublin A: Experimental induction of proventricular dilatation disease in cockatiels (Nymphicus hollandicus) inoculated with brain homogenates containing avian bornavirus 4. Virol J 6: 100, 2009.

3) Honkavuori KS, Shivaprasad HL, Williams BL, Quan PL, Hornig M, Street C, Palacios G, Hutchison SK, Franca M, Egholm M, Briese T, Lipkin WI: Novel borna virus in psittacine birds with proventricular dilatation disease. Emerg Infect Dis 14: 1883-1886, 2008.

4) Horie M, Ueda K, Ueda A, Honda T, Tomonaga K: Detection of Avian bornavirus 5 RNA in Eclectus roratus with feather picking disorder. Microbiol Immunol 56: 346-349, 2012.

5) Horie M, Sassa Y, Iki H, Ebisawa K, Fukushi H, Yanai T, Tomonaga K: Isolation of avian bornaviruses from psittacine birds using QT6 quail cells in Japan. J Vet Med Sci, 2015.

6) Kistler AL, Gancz A, Clubb S, Skewes-Cox P, Fischer K, Sorber K, Chiu CY, Lublin A, Mechani S, Farnoushi Y, Greninger A, Wen CC, Karlene SB, Ganem D, DeRisi JL: Recovery of divergent avian bornaviruses from cases of proventricular dilatation disease: identification of a candidate etiologic agent. Virol J 5: 88, 2008.

7) Musser JMB, Heatley JJ, Koinis AV, Suchodolski PF, Guo J, Escandon P, Tizard IR: Ribavirin Inhibits Parrot Bornavirus 4 Replication in Cell Culture. PLoS One, 2015.

8) Payne S, Covaleda L, Jianhua G, Swafford S, Baroch J, Ferro PJ, Lupiani B, Heatley J, Tizard I: Detection and characterization of a distinct bornavirus lineage from healthy Canada geese (Branta canadensis). J Virol 85: 12053-12056, 2011.

9) Sassa Y, Bui VN, Saitoh K, Watanabe Y, Koyama S, Endoh D, Horie M, Tomonaga K, Furuya T, Nagai M, Omatsu T, Imai K, Ogawa H, Mizutani T: Parrot bornavirus-2 and -4 RNA detected in wild bird samples in Japan are phylogenetically adjacent to those found in pet birds in Japan. Virus Genes 51: 234-243, 2015.

10) Gonzalez-Dunia D, Volmer R, Mayer D, Schwemmle M: Borna disease virus interference with neuronal plasticity. Virus Res. 111: 224–234, 2005.
テーマ: 小鳥大好き | ジャンル: ペット