病因論と健康論

臨床の現場で診療をする時に、「なぜこの病気になったのか?」を知っておくことは非常に重要です。病気になった原因が分からなければ、治療することもできませんし、予防することもできません。病気の原因を研究する分野を病因論(病因学)と言います。

例えば、細菌性鼻炎であれば、細菌が感染することが原因ですし、脂肪肝を起こしたのであれば、食べ過ぎが原因となります。卵詰まりをよく起こすのであれば、発情するような生活が原因です。

診療は、症状に対しての治療を行なうだけでなく、病気の原因を知り、それに対する改善を行なうことが必要になります。診療で重要なのは、どのまでその病気の原因を深く知っているかだけでなく、QOLまで認識しているかということになります。知識と認識の差が、病院によって言われることに違いがでると言っても過言ではありません。(誤診をしていたら、もう論外ですが。。。)

例を挙げてみると、肥満から脂肪肝を起こした症例が来院した場合、食べ過ぎが原因なわけです。目に見える原因は過剰摂取なわけですから、減量するために食事制限を指示することになります。多くの獣医師が、あと薬を出して診療終了となります。一見すると何ら問題ないように思えますが、実はもっと深く原因を探らなければならないことがあります。それは、「なぜ食べ過ぎるのか?」です。これに関しては、なぜあなたの鳥は太ってしまうのか?に詳しく書いていますが、様々な原因によってストレスを感じているから食べ過ぎが起こるのです。また慢性的な運動不足も食べ過ぎの原因となります。ストレスが原因で食べ過ぎてしまうのに、単純に食事制限すればよいのでしょうか?今まで食べることでストレスに対処していたわけです。これを突然、食事量だけ減らした場合、本当に病気の改善につながるでしょうか?そしてその生活は、鳥のQOLが良いと言えるでしょうか?

もう一つ例を挙げてみましょう。発情する対象物(おもちゃや鏡など)があった場合、それが発情を促しているとすれば、刺激となるものを除去する指示をします。しかし発情は、対象物の刺激は一つの要因でしかありません。もっと鳥の生態を知り、発情の条件を知っていれば、それだけの指示で終わることはありません。そして今まで気に入ってたものを突然取り上げられて、それで鳥はどう感じるでしょう。極端な場合は、ケージ内に何も入れないで下さいと指示されることさえあります。鳥たちは、ケージ内で何をすればよいのでしょうか?QOLまで考えれば、そのような指示にはならないはずなんです。

他にも変な指示をされていることがよくあります。ケージは脚を引っ掛けるので危ないですから、プラケースで飼って下さい。南国の鳥だから冷えると死んでしまうので常に30℃にして下さい。ケージから出すと怪我をするので、出さないで下さい。日光浴させると猫に襲われるかもしれないから、外に出さないで下さい。など目先の怪我や病気は防げても、QOLを考えていない指示が出されていることがあります。ましてこのような飼い方をして、健康でいられるでしょうか?

病因論は、病気の原因を改善するためにありますが、もっと大切なのは、どうしたら健康でいられるかという”健康論”を重視しなければなりません。健康論の最も重要な点は、食事と生活になりますが、どういった心理状態でいるかも大切であるといわれています。人では、いかにストレスを感じず、そしてストレスに対する対応力を持っているかが重要といわれています。

飼い鳥は、人に与えられた選択肢でしか生きていくことができません。自分で選べないということは、飼い主さんがストレスをかけない飼い方を知らなければなりません。それにはすでに知られている飼い方を超えた、もっともっと深い飼い主さんの心理状態にまで話が及んできます。

どうしたら鳥たちは健康でいられるのか。鳥たちは、無意識で飼い主さんの心を感じています。5月5日の第3回Birds' Grooming セミナーでは、そんなお話をしたいと思っています。
テーマ: 小鳥大好き | ジャンル: ペット